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六月十六日
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NOBOTABI
EPISODE
- NOBOTABI episodes #019 X short stories -
空を塗りつぶす少年

ただならぬ空の色をしていた。一人の少年が、緑のペンキの缶にねずみ色のペンキを流し込んでいた。まだ混じりきっていないところへ、黒を少し振りまき、六回かき回したところでモップをいれた。そして、モップで空を見上げながら、塗りたくった。深緑、ねずみ色、黒、色は混沌として、混ざるものあり、混ざらないものあり、点あり、筋になった色あり、一様になどなっていなかった。
少年の着ている黒のジャンパーには、いままでの仕事で使ったペンキのしたたりが、無秩序に、鮮やかに、ほとばしったような模様をつくっていた。
半分も空を塗りたくったころ、あたりは夕闇のように暗くなり、そこはかとない不安にそぞろいだ。
少年の仕事の速さにあっけにとられながら、世界の暗くなっていくのを見ていた、いや、感じていた。
※ ※ ※


少年は知っている。全部塗り終えると、どんな色も黒くなってしまうのだと。あの光り輝く太陽さえも、黒くした障子紙の向こうで、まあるく黒く光るのを認められるだけなのだ。目が慣れてしまえば、その違いさえも感じなくなる。
少年のジャンパーの色のほとばしりは、その勢いと鮮やかさを失っていく。
ふと、思いつき、赤のペンキ缶を開けた。人差し指を突っ込んで、親指とすり合わせ、目のすぐ前に持ってきて、濃さと色を確かめた。もう一度人差し指を突っ込むと、人差し指を左の肩になすりつけた。暗くて、赤くは見えなかった。
モップの突っ込んである缶に、赤ペンキを入れ、三回かき回したところで、塗り残しの東の空の隅を塗りたくった。
太陽が出ているのに、世界は真っ暗になった。
西寄りの南の空に、黒い太陽が見える。いつまで、見えているものだろうか。


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SHORT STORIES
2018年6月 山梨県 大月周辺