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​NOBOTABI

EPISODE

​- NOBOTABI episodes #019 X short stories -

空を塗りつぶす少年

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 ただならぬ空の色をしていた。一人の少年が、緑のペンキの缶にねずみ色のペンキを流し込んでいた。まだ混じりきっていないところへ、黒を少し振りまき、六回かき回したところでモップをいれた。そして、モップで空を見上げながら、塗りたくった。深緑、ねずみ色、黒、色は混沌として、混ざるものあり、混ざらないものあり、点あり、筋になった色あり、一様になどなっていなかった。

 

 少年の着ている黒のジャンパーには、いままでの仕事で使ったペンキのしたたりが、無秩序に、鮮やかに、ほとばしったような模様をつくっていた。

 半分も空を塗りたくったころ、あたりは夕闇のように暗くなり、そこはかとない不安にそぞろいだ。

 少年の仕事の速さにあっけにとられながら、世界の暗くなっていくのを見ていた、いや、感じていた。

     ※ ※ ※

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 少年は知っている。全部塗り終えると、どんな色も黒くなってしまうのだと。あの光り輝く太陽さえも、黒くした障子紙の向こうで、まあるく黒く光るのを認められるだけなのだ。目が慣れてしまえば、その違いさえも感じなくなる。

 少年のジャンパーの色のほとばしりは、その勢いと鮮やかさを失っていく。

 ふと、思いつき、赤のペンキ缶を開けた。人差し指を突っ込んで、親指とすり合わせ、目のすぐ前に持ってきて、濃さと色を確かめた。もう一度人差し指を突っ込むと、人差し指を左の肩になすりつけた。暗くて、赤くは見えなかった。

 モップの突っ込んである缶に、赤ペンキを入れ、三回かき回したところで、塗り残しの東の空の隅を塗りたくった。

 太陽が出ているのに、世界は真っ暗になった。

 西寄りの南の空に、黒い太陽が見える。いつまで、見えているものだろうか。

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2018年6月 山梨県 大月周辺

#019

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